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【おすすめ本:書評】若い読者のための 第三のチンパンジー

著者:ジャレド・ダイアモンド

訳者:秋山 勝

出版社: 草思社 (2017/6/8)

価格:850円

POINT:
幅広い知見と視点から、
なぜ「人間」はほかの動物とここまで異なるのか? そもそも「人間」とは何か? という大テーマを、博士の思想のエッセンスをコンパクトに、より最新の情報をふまえて書かれた本です。

最初にこの本を目にしたのは、書店の平積みでした。
「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」などの著作で展開される重要テーマの要点がこの1冊で分かる。という帯にひかれ購入しました。

約400ページに及ぶ大作ですが、大変興味深く読むことができました。時間があり、知的好奇心に飢えている方には是非とも読んでもらいたい本です。

「チンパンジー」と「ヒト」とは、DNAの98.4%が同じで、いわば人間は「三番目のチンパンジー」だというのが書名の由来ですが、その1.6%のわずかな違いがなぜここまで大きな違いを生み出すのか。
分子生理学、進化生物学、生物地理学等の幅広い知見と視点から、壮大なスケールで「人間とは何か」を問いかける本です。

たった1.6%の違いが、なぜ人間と他の動物のとてつもない違いを産み出したのか。なぜ人間はこれほど奇妙な動物なのか。「人間」とは何なのか?
これがダイアモンド博士の一貫した問題意識です。

人類には他の動物には見られないさまざまな特徴がある、と著者はいいます。
言語を使うこと、芸術活動をおこなうこと、性行為がかならずしも繁殖に直結しないことなどの特徴について、本書では他の動物の具体的な行動と比較した具体的で、興味深い考察があり読んでいて時間を忘れるほどに引き込まれました。

例えば、人間の風変わりな性行動について次のような記述があります。

隠された排卵と性交は、男性間の攻撃性を抑制して、協力を引き出すために進化した。
隠された排卵と性交によって、特定のカップルの絆が強まり、ヒトの家族の基礎ができていった。
女性は排卵を隠すことで、パートナーと男性を永続的に結びつけ、パートナーが産んだ子どもの父親が自分であると確信させるようにしむけた。

農業と健康については次のような記述があります。

現在でもなお猛威を振るっている伝染病や寄生虫は、農業に移行するまでは確たる勢いをもっていなかった。こうした病気がはびこるのは、人口が密集し、栄養不良の定住者の住む社会に限られ、住人は互いのあいだで、あるいはみずからの排泄物を介して絶えず病気をうつしあっていた。 集団感染する伝染病の場合、規模も小さく、人数もまばらで、たびたびキャンプを移動する狩猟民の集団では長生きすることはできない。結核やハンセン病、コレラの発生は農村が勃興してからのことで、天然痘、腺ペスト、麻疹(はしか)は、都市に人が集中して人口密度が高まったわずか数千年前になってから出現するようになったのである。

残念なことに、現在の日本の義務教育においては、国語、算数、理科、社会の授業はあるものの、自然人類学や心理学、社会学、経済学などに関連し、人間とはどんな動物なのかを考える授業がほとんどありません。

大学の一般教養でも、生物の授業の中で、ヒトの進化についてはあまり深く語られていないのが現状です。

「若い読者のための」と書いてあるように、いろんな方に読んでもらいたいとの著者の思いが伝わる作品になっていると思います。

本書は専門的な研究やデータに基づいたものでありながら、初心者にもわかりやすく書かれているため、人類の歴史を知りたい人、単に知的好奇心を満たしたい人にも、適した一冊だと思います。


参考

目次:
第1部 ありふれた大型哺乳類
 第1章 三種のチンパンジーの物語
 第2章 大躍進
第2部 奇妙なライフサイクル
 第3章 ヒトの性行動
 第4章 人種の起源
 第5章 人はぜ歳をとって死んでいくのか
第3部 特別な人間らしさ
 第6章 言葉の不思議
 第7章 芸術の起源
 第8章 農業がもたらした光と影
 第9章 なぜタバコを吸い、酒を飲み、危険な薬物にふけるのか
 第10章 一人ぼっちの宇宙
第4部 世界の征服者
 第11章 最後のファーストコンタクト
 第12章 思いがけずに征服者になった人たち
 第13章 シロかクロか
第5部 ひと晩でふりだしに戻る進歩
 第14章 黄金時代の幻想
 第15章 新世界の電撃戦と感謝祭
 第16章 第二の雲

著者:ジャレド・ダイアモンド
1937 年ボストン生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。進化生物学者、生理学者、生物地理学者。アメリカ国家科学賞受賞。著書『銃・病原菌・鉄』でピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。同書は朝日新聞「ゼロ年代の50 冊」第1 位に選ばれた。

 

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